Sponcerd Link
こんにちは。水陸両用トレーナーの橋本です。
「水泳は背骨を歪ませる!」最近こういった記事が研究レベルで発表されたりしていますが、みなさんはどう思いますか? 私は水泳指導はもちろん、Jr’ユースからプロアスリートまでのトレーニング指導も行なうのでよく質問されます。
こんな記事です → 水泳は体をゆがませる!?背骨の異常、腰痛が2倍近くに、小児科国際誌で研究発表
プロのトレーナーとして現場を見てきた経験や培ってきた知識と照らし合わせて考察しました。
水泳をする方や子供に習わせている方であれば気になる記事だと思いますので、少し長文ですが最後までご一読いただけると幸いです。
私の考え方のポイントは3つあります。
①研究って何をしたの?
②世界レベルの選手は歪んでませんけど?
③何で水泳がダメという考え方になるのか?
最後は私なりの、④水陸両用トレーナー的まとめ です。
まずは1つ目
①研究って何をしたの?
この記事では、競泳が思春期の体にどのような影響があるかを調べた、と書いています。
そして、脊椎の形と腰痛への影響を比較するために、競泳に取り組む学生と競泳をしていない学生を対象として、質問表で情報を収集した。とのことです。
私は、「え?それだけ?」と思いました。それでは研究というよりはただの統計では?
最低でも、どのような練習をしていた?、とか、どれくらいの練習量なのか?、や、競泳以外に何かしていたか?、などそういうことも聞かないと比較できないのでは? 水泳そのものが原因なら競泳選手は全員歪むはずです。
歪む場合と歪まない場合があるなら水泳という競技そのものが原因じゃなくてもっと細かいレベルでのケーススタディを検証して比較しないと水泳そのものが悪いとは言えないのではないのでしょうか?
例えば、タバコを吸う人吸わない人での肺がんのリスクを比較するのは解ります。タバコは吸う行為が身体に与える影響が科学的に確立されているし、吸う以外の行為が無いですからね。
2つ目、
②世界レベルの選手は歪んでませんけど?
世界水泳やオリンピックを観ていて「姿勢歪んでるなー」って思ったことありますか?
みんな綺麗で立派な体型ですよね。上記でも触れましたが、じゃあ水泳そのものが原因ではなくて練習内容・練習量なども加味するべきでは?と考えます。
しかし、ここで疑問が生じます。
練習内容や練習量が関係するなら、幼い頃から泳ぎまくっている世界レベルの選手はメチャメチャ歪むんじゃないの?、ということです。
おそらくウォーミングアップだけでも数千メートル泳ぐし、一日に1万メートル以上なんて当たり前に泳ぎます。じゃあ何で一流選手は歪んでないのでしょうか?
答えは簡単です。
陸上でのトレーニングもちゃんと行なっているからです。私達トレーナーから言わせていただきますと、「スポーツ」と「運動・トレーニング」は全くの別物です。
運動やトレーニングというものは身体の機能を高めるために行なうもので、身体の動きを意識的にコントロールして制御させます。
しかしスポーツはルールを敷かれ競うものであり、身体動作を完全に自身の思い通りにできるものではありません。時には機能的ではない動作でパフォーマンスを発揮して身体に無理がかかることも多々あります。
だからこそ、陸上でのトレーニングで身体の機能を高めておくこと、言い方を変えると、スポーツの様々な動作に対応するための身体機能の器を大きく頑丈にしておく必要があるのです。 子供であれば水泳以外にもしっかり外でも遊ぶことです。
なので、まともなトレーニングや運動も無しにスポーツだけを頑張れば、身体に歪みが出ても仕方ないかな? と思います。それは他の野球でもテニスでもバスケットでも同様です。
さらに水泳に限って言わせていただくと、ヒトは水棲生物ではなく陸上の生物です。骨格も筋肉も内臓もすべて陸上での重力下でもっとも機能的に動けるようにデザインされています。よって、陸上(重力下)で身体がしっかり機能していない状態で水泳を頑張っても、スポーツパフォーマンスは低く、ときには身体に負担になっているかも知れないのです。
おそらく今回の研究で歪んでいるとなった学生は、水泳以外にまともなトレーニングや運動を行なっていなかったのではないでしょうか? たしかに私の知っている学生時代競泳選手だった方には、確かに猫背・反張膝・足部の靭帯緩み等が見られます。しかし練習量に対して陸上での運動をしていない方がほとんどです。
陸上のトレーニングや運動はとても重要ということがわかります。子供であればトレーニングというよりは外で思いっきり遊ぶことが大事です。
3つ目、
③何で水泳がダメという考え方になるのか?
これは、②で挙げましたが、スポーツと運動の区別が無いのではないでしょうか?
例えば「運動不足だから水泳を始めよう!」これは少し矛盾しています。
ただカロリー消費が目的だったりするのであればスポーツを行なうのもアリですが、身体の機能を高めようというのであればトレーニングを行なったほうが良いでしょう。
また、スポーツをもっと頑張りたいのなら別でトレーニングも必ず必要です。
このように、スポーツとトレーニングは別なのですが、一般的にはそのように捉えられてはいません。なので「スポーツをしているから健康的」といったイメージがありますが、少し違うわけです。
一般的には「水泳という運動」をする。と捉えられているのでそういった考え方になり「水泳という運動は身体に良くない」となるのです。口酸っぱいですが、水泳は運動ではなくスポーツです。
私自身、水泳は全身運動で身体にメリットであるという考えは揺るがないですが、水泳だけやっていればOKとは思っていません。重力下での運動・トレーニングも必ず必要です。
水陸両用トレーナー的まとめ
水泳(競泳)はスポーツです。スポーツと運動は区別して考えるべきで、運動やトレーニングで身体の基礎ができている状態でなければスポーツは身体の負担になることがあります。
なので運動やトレーニングを全くせずに、スポーツばかりしていると身体が歪む可能性は否めない。
大人であればトレーニング、子共であれば外でもしっかり遊ぶことが大事で、そういった身体の土台があってこそスポーツは身体に良いもの、楽しめるものです。
水泳が良い悪いというのではなくて、水泳というモノの特性を理解して判断しなければ合理性に欠けるでしょう。
あくまでいちトレーナーの個人的な意見ですので、参考程度にしてください。
最後までお読みいただきありがとうございました。
良く納得しました。ありがとうございました。ただ「スポーツ」の定義を明確にするか「スポーツ」の代わりに「競技スポーツ(運動競技、競技スポーツ)」などを定義の上で使ってはどうでしょうか?
筆者の橋本です。
そうですね。ただスポーツというよりは競技スポーツというように呼びわけたほうが分かりやすいですね。世間一般にはスポーツとトレーニングを身体を動かすという観点から一緒に捉えられたりしています。こういったことをちゃんと世間に認知して頂くことも私達の使命だと思っています。
ありがとうございました。今後の参考にさせていただきます。
とても参考になりました❗
私も同様の意見です‼
水泳が大好きだから、キチンとした意見を読むと嬉しいです。有り難う御座いました。
筆者の橋本です。
ありがとうございます。
メディアに出てくる情報(特に健康に関する内容)は人の目を引きやすい見出しになることが多いです。目を引くのは良いことだと思いますが、一方的な見方だったり、偏見のような内容も多いです。
こういったことを正しい方向に導くのも我々トレーナーの仕事だと思っています。
今後も記事をご拝読いただければ幸いです。