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皆さんは、今の自分に適切なメニューを作成し、効果的な自主練ができていますか?
この記事では「高い練習成果を生むメニューの作り方」を説明します。
内容としては、日本代表選手を輩出しているコーチ陣も実践している、メニューの作り方です。
自主練効果を高めて今よりも、さらに速くなりたい方には是非、参考にしてみてください。
練習メニューの目的を考える
練習メニューを作る時はまず、目的を考えていきましょう。
あなたは今、どんな目的で日々の練習を行っていますか?練習の目的を改めて整理したい方は、もう1度考えてみましょう。
練習メニューの目的は大きく分けると2種類に分かれます。
目的①:テクニックを磨く
目的②:身体機能の向上
何故、この2つ?と疑問に思われた方もいらっしゃいますよね。
それぞれの目的がなぜ必要か、補足説明をします。
目的①:テクニックを磨く
あなたが普段、テクニックを磨く為に実施しているメニューには、どんなものがありますか?
例えば、「ドリル」があるのではないでしょうか。
ここでは「ドリル」を例にして「テクニックを磨く」の意味について、説明します。
テクニックを磨く為の「ドリル」は数多く存在します。
ただ実は、速く泳ぐ為の基礎テクニックは次の2つに集約されます。
①:前に進む為の推進力を得ること
②:抵抗を減らして、効率よく推進力を維持すること
例えばクロールでいうと、
・キャッチの水中動作で肘が立つようになる=推進力を得るテクニック
・入水時に指先から丁寧に入水できるようになる=抵抗を減らすテクニック
となりますね。
そもそも、今の自分の課題は「推進力を得ること」と「抵抗を減らすこと」のどちらなのか?
今行っているドリルの目的は「推進力を得ること」と「抵抗を減らすこと」のどちらなのか?
などを是非一度、考えてみてください!
目的②:身体機能の向上
速く泳ぐ為には、テクニックを磨く他にも、「身体機能を向上させる」必要があります。
例えば、「持久力が上がる」や「スプリント力が上がる」ということが身体機能の向上に含まれます。
ここでは「速くなる為に上げるべき身体機能」をもう少し具体化して、説明します。
向上させるべき身体機能は次の4つになります。
①:神経系
25m〜50mの短距離でスピードを出す際に、大切な身体機能です。
神経系の機能を向上させると、今よりも身体を速く動かせるようになります。
なぜ短距離でスピードを出す為に、身体を速く動かせることが、大切なのでしょうか?
それは、出せるスピードが「ストロークの長さ」と「ストロークテンポ」の掛け合わせで決まるからです。
神経系で、速く身体を動かせるようになることで、「ストロークテンポ」を今よりも上げることができるようになります。
②:対乳酸
100m以上の距離で、レース終盤でも動く身体を作る為に、必要な機能です。
対乳酸の機能を向上させると、レース終盤で乳酸が溜まった状態でも、身体が動くようになります。
なので、今よりもレースのラストスパートが効くようになったり、後半に大きく失速することを防げます。
③:最大酸素摂取量
200m以上の距離のレース中盤で、高いスピードを維持する際に必要な身体機能です。
名前の通りですが、最大酸素摂取量の機能を向上させると、1回の呼吸で摂取できる酸素量が上がります。
結果、高いスピードを今よりも長く出し続けられるようになります。
もう少し詳細に説明します。
私たちの身体は泳いでいる時、呼吸している時に摂取した酸素を使って、エネルギーを生み出しています。
摂取できる酸素量が増えると、レース中盤で今よりも高いスピードを出せたり、今と同等のスピードを長く保てるようになります。
④:乳酸生成タイミング
200m以上のレース前半で、「楽に速く」泳ぐ為に必要な身体機能です。
乳酸生成タイミングを遅らせる(今よりも乳酸を出にくくする)ことを目的に、この身体機能を向上させていきます。
練習メニューの目的まとめ
ここまでの話を表にまとめると、以下のようになります。
メニューの目的について、より詳細な考えを知りたい方は、トレシェアというサービスも覗いてみてください。日本代表選手を輩出しているコーチ陣がメニュー設計に当たる考え方をセミナー動画で解説している動画が視聴できます。
記事:日本代表選手のメニューが見られる!?新サービス『トレシェア』とは?
目的別サンプルメニュー
ここまでは、練習には2つの目的と6つの要素があることを説明しました。
この章では、要素別のサンプルメニューを紹介します。
具体的なメニューを見て、理解度を高めていきましょう。
テクニック ー 抵抗を減らす&推進力を上げる
種目毎に、向上させるべきテクニックは異なります。
ここでは、テクニックを上げる為の練習メニューの一連の流れを捉えていただく為に、サンプルメニューを作成しました。
メニューの全体感について補足説明をします。
以下の4つの流れで、テクニックを身につけていくメニュー構成になっています。
① ドリルで動きを身体に学習させる
② ゆっくり泳ぎながら動きを意識
③ スピードを上げていきながら動きを意識
④ 最後にスピードで動きは無意識で泳ぐ
ゴールは、無意識でも理想の動きができている状態を作ることです。その為に、動きを意識しながら反復し、身体に学習させていきます。
今回は「メニューの作り方」というテーマなので、具体的なドリルメニューの説明はしておりません。
種目毎の「抵抗」と「推進力」が生まれるポイントを整理してみて、ご自身に合ったドリルをピックアップしてみてください。
身体機能 ー 神経系
次に、神経系の機能向上を狙うサンプルメニューの紹介です。
実施イメージの動画リンクもありますので、参考にしてみてください。
動画①:15mラインでフロート状態スタート Max
【8sec sprint】①50mのBestから8秒間で進める距離を換算しスタートラインを設定。②8秒以内に壁まで到達できるか全力チャレンジ。③到達できたら少しずつスタートラインを下げていく。自然と頑張れちゃうスプリント練。タッチの練習にもなります。
※リアクション大きめを注文したらヤラセ感溢れた笑 pic.twitter.com/kow9KkUzEn— 浜上洋平(大阪体育大学女子水上競技部 ヘッドコーチ) (@hamagamiffy) December 11, 2019
動画②:5mラインでターン + 5mスイム Max
点線部分が神経系に刺激を入れるメニューになります。
メニューの全体感について、補足説明です。
次の3ポイントを押さえてメニュー作成をしていますので、メニュー作りの際に参考にしてみてください。
・神経系のメニューは、身体に疲労が溜まっていないメニューの前半に入れましょう。
・12.5mと25のDive Maxでは、50mのベストタイムより速い刺激が身体に入るように「距離を短く」したり「本数を少なく」しています。
・メニュー中盤からは、理想の動きを作って、良い泳ぎの状態を作って練習を終われるようにしています。ドリルで動きを作って、良い動きを保ったままディセンディングでスピードを上げていきましょう。
身体機能 ー 対乳酸
対乳酸能力を向上させるメニューの紹介です。
点線部分が対乳酸ゾーンの刺激を入れるメニューになります。
サークルを長くとってあるので、1本ずつ全力を出し切れるようにしましょう。
なるべく速く乳酸を出して、残りの本数を耐え続けましょう。
メニューの全体感について、補足説明です。
以下の3つのポイントを押さえてメニュー作成をしていますので、メニュー作りの際に参考にしてみてください。
・この日は、点線部分のメインメニューだけに集中できるようにしています。
・KickとPullのディセンディングで血流を回して身体を起こしましょう。
・Swimではドリルで良い泳ぎを作って、ディセンディングでHR170まで心拍に刺激を入れておき、ウォーミングアップを完了させます。
※ HR170の刺激が入っているかチェックするときは、10秒間の心拍数を計りましょう。28〜29回であればHR170の刺激が入っています。
紹介するサンプルメニューは、残り2つです!
少し読み疲れが出てきたかもしれませんが、頑張りましょう。
身体機能 ー 最大酸素摂取量
最大酸素摂取量を向上させるメニューの紹介です。
点線部分が最大酸素摂取量ゾーンの刺激を入れるメニューになります。
HR180(心拍数が10秒間で30回以上)を早いタイミングで作れるように頑張りましょう。
脈拍が上がるので、かなりハードなメニューですが、HR180(心拍数が10秒間で30回以上)の状態になることで、最大酸素摂取量が向上します。
メニューの全体感について、補足説明です。
基本的には、対乳酸のメニューと同様で、点線部分のメインメニューだけに集中できるようにしています。
次は、最後のサンプルメニュー紹介です!
身体機能 ー 乳酸生成タイミング
乳酸生成タイミングを遅らせる為のメニューです。
点線部分が狙っている部分の刺激を入れるメニューになります。
HR170(心拍数が10秒間で28〜29回)で泳ぎ続けましょう。
人の身体は、HR29になると乳酸が生成され始めます。HR170で泳げるスピードが上がることで、乳酸が出るタイミングが遅くなっていきます。
メニューの全体感について、補足説明です。
このサンプルメニューも、点線部分のメインに集中できるような構成にしています。
前半のドリルでテクニックを磨いて、後半は、HR170(心拍数が10秒間で28〜29回)ゾーンの刺激を与えることに集中しましょう。
目的別メニューの配分
この章では、各目的の要素別のメニューを「どのような頻度で」「どれくらい反復させれば良いのか?」
という点をご説明していきます。
ここが分かれば、メニュー作成に取りかかれます!もう一踏ん張りです。
年間計画を立てて、配分していく
各要素別のメニューはどれも重要です。なので、全要素の練習メニューに取り組むのが一般的です。
ただ、時期によって割合や頻度を調整することで、練習効果を高めることができます。
ここを考えるのに必要になるのが、「年間計画」になります。
年間計画のイメージ
最も標準を合わせたいレースから逆算して、計画を立てていきます。
以下が年間計画のイメージです。
この表では、3月4週目と、8月の4週目にある2回のレースに照準を定めています。
計画の中には「期間」という分類があります。
練習の効果を高めるには、「期間」によって実施するメニューの割合を変えることが大切です。
次からは、「期間」の説明と、期間毎のメニューの配分割合例を紹介します。
期間の分類
ここから6つの期間を説明していきます。
準備期
本格的なトレーニングに入る前の準備期間にあたります。
準備期のメニュー配分イメージは、神経系10%、テクニック30%、乳酸生成タイミング60%くらいになります。
週4回練習ができると仮定すると、以下のような週間スケジュールになるかと思います。
週間のスケジュール組みをする際のポイントは次の3つになります。
・毎日の練習開始時のフレッシュな状態の時に、神経系を刺激しましょう。
・テクニックを磨くドリルを取り入れ、理想の動きを身体に学習させましょう。
・乳酸生成ラインの10秒間の心拍数29回HR170(10秒間の心拍数28〜29回)のゾーンでも、ドリルで学習した理想の動きを反復しましょう。
鍛錬期
高いスピードで泳げるようになる為の土台を作る期間です。
鍛錬期のメニュー配分イメージは、神経系10%、テクニック20%、乳酸生成タイミング50%、最大酸素摂取量20%くらいになります。
練習ボリュームが必要な時期になりますので、練習時間を長めに確保できるとベストです。
週4回練習ができると仮定すると、以下のような週間スケジュールになるかと思います。
週間のスケジュール組みをする際のポイントは以下になります。
・OFF明け
疲労が溜まり切っていないOFF明けに神経系の刺激を入れましょう。
ドリルと乳酸生成を遅らせるメニューで理想の動きを反復し、泳ぎを固めましょう。
・OFF前日
「追い込む日」という位置付けにしましょう。
「追い込む日」では、10秒間の心拍数29回から初めて、最後は心拍数30回以上になるまで追い込めると理想です。
強化期
練習強度を対乳酸のレベルまで高めて、レースに近い刺激を与える期間になります。
強化期のメニュー配分イメージは、神経系10%、テクニック20%、乳酸生成タイミング40%、最大酸素摂取量20%、対乳酸10%くらいになります。
週4回練習ができると仮定すると、以下のような週間スケジュールになるかと思います。
週間のスケジュール組みをする際のポイントは以下になります。
・OFF明け
疲労が溜まり切っていないOFF明けに神経系の刺激を入れましょう。
ドリルと乳酸生成を遅らせる為のメニューで理想の動きを反復し、泳ぎを固めましょう。
・OFF前日
「追い込む日」という位置付けにしましょう。
「追い込む日」は、最大酸素摂取量だけでなく、最も高負荷の対乳酸の刺激も入れましょう。
回復期
この期間は、回復に専念する期間です。強化期で追い込んで溜まっている疲労を除くことが目的です。
回復期のメニュー配分イメージは、テクニック70%、乳酸生成タイミング20%、神経系10%くらいになります。
週4回練習ができると仮定すると、以下のような週間スケジュールになるかと思います。
週間スケジュール組みをする際のポイントは以下になります。
・週前半
身体機能を向上させるメニューは行わず、テクニックのみです。
水中練習の目的を、泳ぎを整えることに絞って、疲労を抜きましょう。
・週後半
神経系と心拍数29回までの刺激を入れて、緩ませた身体を締めましょう。
レース期
記録を狙うレースではく、レース感覚を養う目的で出場するレース週の調整期間です。
レース期のメニュー配分イメージは、神経系10%、テクニック60%、乳酸生成タイミング25%、最大酸素摂取量5%くらいになります。
週4回練習ができると仮定すると、以下のような週間スケジュールになるかと思います。
週間スケジュール組みのポイントは以下になります。
・週前半
テクニックと心拍数29回ゾーンで泳ぎを整えましょう。
レースに向けて、神経系で高強度の刺激も入れておきましょう。
・レース前日
泳ぎを整えたら、心肺機能に刺激を入れておきましょう。
前日に心拍数30回以上まで上げておくことで、翌日のレースで身体が動くようになります。
テーパー期
記録を狙う本命のレースに向けて調整期間になります。大体レースの2週間前から実施することが多いです。
テーパー期のメニュー配分イメージは、神経系10%、テクニック80%、最大酸素摂取量5%、対乳酸5%くらいになります。
週4回練習ができると仮定すると、以下のような週間スケジュールになるかと思います。
週間スケジュール組みのポイントは以下になります。
・週前半
週明けのフレッシュな状態で神経系に刺激を入れた後、テクニックで泳ぎを整えます。
対乳酸では、強化期にやっていた内容より本数を減らし、高いスピードで泳ぎます。
レースに近い刺激を与えつつ、レース感覚を養っていきます。
・週後半
週前半の対乳酸の部分が、対乳酸の部分が最大酸素摂取量のメニューに変わります。
ここでは、身体機能を向上させることが目的ではありません。
ある程度高いスピードで、理想の泳ぎができているかを確認することが目的です。
強化期に行っていた内容より、本数を減らして集中して行いましょう。
「年間計画」と「期間の分類」まとめ
ここまでの話をまとめると、次のようになります。
まとめ
長文の記事を最後まで、お読みいただきありがとうございました。
速くなる為に効果的な練習メニューを作る為には、「目的を要素に分解」して「適切な割合で反復する」ことが大切です。
その為に、ベストタイムを狙いたいレースから逆算して年間計画を考えることがとても大切になってきます。
毎日の練習を飽きずに継続させる為には、メニューの種類を多く知っておくことが重要です。
トレシェアというサービスでは、日本代表選手が行っているメニューを定期的にアップしているので、最先端のメニューを継続的に情報収集することが可能です。
また、日本代表選手を輩出するコーチがどんなことを考えてトレーニングしているかセミナー動画も見れます。
練習メニューだけでなく、栄養やコンディショニングといった幅広い知識を知って、ご自身の成長に繋げることが可能です!
以下の「トレシェア紹介記事」も是非、1度読んでみてください!