水泳の大会2週間前から前日までの練習メニューを、マスターズ向けに週1〜3回別・距離と本数とサークル付きで紹介します。量を落として速さは残す「テーパリング(調整)」の進め方です。
「大会まであと2週間。練習を減らしたほうがいいと聞くけれど、何を、どれだけ減らせばいいのかが分からない」
マスターズの大会に出る社会人スイマーから、エントリー後にいちばん多く受ける質問です。学生時代はコーチが「今週から調整」と宣言してくれましたが、自分で練習を組んでいる大人のスイマーには、その切り替えの合図がありません。
この記事では、大会2週間前からレース前日までの練習メニューを、週1回・週2回・週3回それぞれの場合に分けて、距離・本数・サークル付きで紹介します。いわゆる「テーパリング(調整)」を、普段の練習量が少ないマスターズ向けに組み直したものです。
対象は18歳以上の成人マスターズで、25mまたは50mの公共プール・スポーツクラブで、週1〜3回・1回60分前後泳いでいる方です。普段のメニューは1時間でできる社会人・マスターズの練習メニュー表を前提にしていますが、別のメニューで練習している方でも、減らし方の考え方はそのまま使えます。
この記事が答える問い:2週間前から「何を減らし、何を残すか」
テーパリングの原則はひとつだけです。泳ぐ量(距離)を落として、スピードの質(強度)は残す。
多くの人が間違えるのが、「調整=楽にする」と考えて、量も強度も一緒に落としてしまうことです。量を落とすのは疲労を抜くため、強度を残すのはレースのスピード感覚を保つためです。両方落とすと「体は軽いのにタイムが出ない」状態になりやすくなります。
そしてマスターズ固有の注意点として、普段の練習量が少ない人ほど、落とす幅は小さくてよいということがあります。週2回・1回2,000mの人が選手と同じ割合で削ると、ただ泳がない2週間になってしまいます。
前提:残り週数と週の練習回数で、やることが変わる
調整メニューを組むとき、最初に決めるのは次の3つです。
- 残り週数:2週間前の週(残り14〜8日)と、1週間前の週(残り7〜2日)では中身が違います。前日は別枠です
- 週に何回泳げるか:週1回の人は「減らす余地」がほとんどありません。週3回の人は日によって役割を分けられます
- 出る種目の距離:50m・100mなら短いレースペースを多めに残し、200m以上なら少し長めのペース練習を1本残します
目安として、この記事では2週間前の週は普段の70〜80%、1週間前の週は50〜60%の距離に落とします。週1回の人は、割合ではなくメニューの中身を入れ替える形で対応します(後述)。
なお、開催日・エントリー締切・使用プール(25m/50m)は、主催団体が公開する大会要項で必ず確認してください。締切は大会のかなり前に設定されることが多く、「2週間前」の起点を間違えやすいところです。
サークルの目安:自分の実力帯に合わせて読み替える
メニューに書くサークル(出発間隔)は、実力帯で3段階に分けて表記しています。普段の練習で100mを泳いだときのおおよそのタイムで、自分の列を選んでください。
| 実力帯 | 100mの普段のタイム | 50mのサークル | 100mのサークル |
|---|---|---|---|
| A | 1分20秒前後まで | 1’00 | 1’50 |
| B | 1分20秒〜1分40秒 | 1’15 | 2’15 |
| C | 1分40秒〜2分10秒 | 1’30 | 2’45 |
以下のメニューでは「50m × 6|1’00 / 1’15 / 1’30」のように、A / B / C の順に3つ書いています。サークルは普段どおりでかまいません。調整期だからといってサークルを緩める必要はなく、緩めると強度が落ちて「量も強度も落とす」失敗につながります。追いつかない場合だけ10秒足してください。
2週間前の週(残り14〜8日)の練習メニュー
この週のテーマは「量を一段落として、レースペースを体に入れる」です。普段の練習で触っていたスピードを、疲れの少ない状態で確認し直すイメージです。
メニューA:レースペースの日(約1,700m・約55分)
Mainの50m × 6は、出る種目の目標タイムから割り出したペースで泳ぎます。100mの目標が1分30秒なら、50mは45秒前後です。全力ではなく「レースの前半で出す速さ」をそろえることが目的なので、6本のタイムがばらつかないことを優先してください。
メニューB:技術とフォームの日(約1,500m・約50分)
この週に週3回泳げる人は、A → B → Aの順で入れます。週2回ならA → B。週1回の人はAだけを行い、Bのターン練習(15m × 6)をAのMain2の代わりに入れてください。
1週間前の週(残り7〜2日)の練習メニュー
この週のテーマは「短く・速く・すぐ帰る」です。距離は普段の半分ほどに落とし、1回の練習は45分以内で終えます。「最後にもう一度追い込みたい」と思うのが自然ですが、1週間前の追い込みは当日までに回復しきれないことが多く、やらないのが基本です。
メニューC:スピードの日(約1,200m・約40分)
メニューD:前々日の軽い日(約900m・約30分)
週3回の人はC → D → 前日。週2回の人はC → 前日(前日に泳げない場合はC → D)。週1回の人はCを前日か前々日に入れ、Main2の飛び込みダッシュを2本に減らしてください。
前日のメニューは、量をさらに落として体を軽くすることが目的なので内容が別になります。大会前日のメニューサンプルにそのまま使える形で載せていますので、こちらを前日用にしてください。ウォーミングアップの考え方はウォーミングアップでの4つのポイントも参考になります。
週1〜3回別・2週間の組み立て表
ここまでのメニューを、週の練習回数ごとに2週間に並べたものです。曜日は自分の予定に合わせてずらしてかまいませんが、「速い日」と「速い日」の間は2日以上あけるようにしてください。
| 週の回数 | 2週間前の週 | 1週間前の週 | 前日 |
|---|---|---|---|
| 週1回 | A(Main2をターン練習に差し替え) | C(飛び込みダッシュは2本)を前日か前々日に | 泳げる場合は前日メニュー |
| 週2回 | A → B | C → 前日(前日に泳げなければ C → D) | 前日メニュー |
| 週3回 | A → B → A | C → D → 前日 | 前日メニュー |
2週間前の週の距離は、週1回で約1,700m、週2回で約3,200m、週3回で約4,900mになります。普段の60分メニュー(1回約2,000〜2,300m)と比べると、ちょうど70〜80%に収まるはずです。1週間前の週はさらに半分ほどです。
よくある失敗
1. 完全に休んでしまう
「疲れを抜くなら泳がないのがいちばん」と、2週間前からほとんど泳がない人がいます。疲れは抜けますが、水の感覚とスピード感も一緒に抜けます。量を減らすのであって、やめるのではありません。
2. 直前に「最後の追い込み」を入れる
不安になって、1週間前に普段より長いメインを入れてしまうケースです。当日に疲れが残ります。追い込みたくなったら、「2週間前の週」が最後の追い込み相当だと考えてください。
3. サークルを緩めて、本数も減らす
調整期に入ったからとサークルを10〜20秒緩め、さらに本数を減らすと、強度が普段より明らかに下がります。減らすのは本数(距離)、サークルは普段どおりが基本です。
4. 前日や当日に新しいことを試す
新しいドリル、新しい水着、変えたことのないアップの順番。試すなら2週間前の週までです。大会の週は、やったことのあることだけを繰り返します。当日の動き方は試合でベストを出すための当日の動き方にまとめています。
5. 「2週間前」の起点を間違える
エントリー締切から数えてしまう、2日間の大会で1日目から数えてしまう、というケースが意外に多いです。自分が出る種目の日から逆算してください。
よくある質問
Q. 週1回しか泳げません。それでも2週間前から調整する意味はありますか?
あります。ただし「減らす」調整ではなく、「中身を入れ替える」調整になります。週1回の場合、残り2週間で泳げるのは2回だけです。1回目はメニューA(レースペースの確認)、2回目はメニューC(短いスピード)にして、どちらも普段の持久系のメインは入れません。量を減らす余地がないぶん、Downを長めにとって、きつさを翌日に残さないことを優先してください。
Q. 調整に入ってから、かえって体が重く感じます。練習を増やすべきですか?
増やさないでください。練習量を落とした直後の数日は、リズムが変わることで「重い」「進まない」と感じる人が少なくありません。重さが気になるときは、DrillとDownを丁寧に行い、Mainの本数はそのままにします。体調そのものに不安があるときは練習の問題ではないので、無理をせず専門家に相談してください。
Q. 50mと200mの両方に出ます。どちらに合わせて調整すればいいですか?
基本はこの記事のメニューのまま、Mainの中身だけを種目に寄せます。50m中心なら、メニューAのMainは「50m × 6」のまま、メニューCのMain2(飛び込みダッシュ)を6本に増やしてもかまいません。200m中心なら、メニューAのMainを「100m × 3 目標の200mペース」(サークル 2’30 / 3’00 / 3’30)に差し替え、Main2はそのままにします。両方に出るなら、Aは200m寄り、Cは50m寄りに組むと、2つの速さを両方残せます。
まとめ:調整は「減らす練習」ではなく「残す練習」
大会2週間前からの練習でやることは、距離を落として、レースの速さを残すことです。2週間前の週は普段の70〜80%、1週間前の週は50〜60%。サークルは普段どおり、本数だけを減らす。そして前日は前日メニューに切り替える。この流れを一度やってみると、次の大会からは自分なりの微調整ができるようになります。
このメニューは、週1〜3回・1回60分前後という条件で組んだ出発点です。目標大会まで2か月以上ある方は、ベストタイムを出すための練習メニューの作り方で、期間全体の配分から考えてみてください。
swim coach のご案内
2週間前からの減らし方は分かった。では、そこまでの10週間は何をすればいい?
ここまで紹介してきた練習は、多くのスイマーに効果があるものです。ただ、それを「いつ・どれだけやるか」は、目標大会までの残り週数と、週に何回泳げるかで変わります。
swim coach は、目標大会・目標タイム・週の練習回数・1回の練習時間を入力すると、初週の練習メニューと、大会までのロードマップを作成します。W-up・Kick・Pull・Main・Down まで、サークル付きで1日1枚。プールサイドでそのまま使えます。
入力は約3分。カード登録は不要で、初週のメニューは無料で作れます。
※18歳以上の成人マスターズ向け/週1〜7回・1回30分〜3時間・25m/50mプール対応


