1〜3月の短水路大会に向けて、大会12週間前(3か月前)から目標タイムを決め、練習ペースに落とし、12週間を4つの期に分けて組む水泳練習計画の作り方を、マスターズ向けに週1〜3回別・距離と本数とサークル付きで紹介します。
「1月末の大会にエントリーした。残りはちょうど3か月。目標タイムをどう決めて、そこから毎回の練習をどう逆算すればいいのかが分からない」
冬の短水路大会のエントリーが始まるこの時期、マスターズスイマーからいちばん多く受ける相談です。選手時代は「今シーズンの目標は○秒、だから今月はこの練習」とコーチが決めてくれましたが、自分で練習を組んでいる大人のスイマーには、その逆算の手順そのものがありません。結果として、目標タイムは「できれば自己ベスト」のままぼんやりと置かれ、練習は普段と同じメニューの繰り返しになりがちです。
この記事では、目標大会の12週間前から9週間前までの4週間(準備期)の練習メニューと、12週間全体をどう分けるかのロードマップを、週1回・週2回・週3回それぞれの場合に分けて紹介します。8週間前からの土台づくりは冬の土台づくり8週間メニュー、最後の2週間は大会2週間前からの調整メニューで別に書いていますので、この記事は「その前の4週間」と「全体の設計図」を担当します。
対象は18歳以上の成人マスターズで、25mまたは50mのプールで週1〜3回・1回60分前後泳いでいる方です。普段のメニューは1時間でできる社会人・マスターズの練習メニュー表を前提にしていますが、距離の目安を自分の普段に置き換えれば使えます。
この記事が答える問い:12週間前の今、「目標タイムをどう決め、どう練習に落とすか」
12週間前にやることは、泳ぎ込むことではありません。「現状を測る → 目標タイムを決める → 練習ペースに換算する → 12週間を期に分ける」の4つを、最初の4週間で済ませることです。
多くの人が間違えるのが、目標タイムを決めないまま練習を始めることです。目標がないと、Mainセットの速さが「今日の気分」で決まり、12週間経っても「速くなった気がするけれど、何が変わったのか分からない」状態になります。逆に、目標タイムが1本決まっていれば、Mainの50mを何秒で回るか、持久系の100mを何秒で泳ぐかが全部そこから割り出せます。練習メニューの作り方の記事で「目的から逆算する」と書いた考え方を、マスターズの12週間に当てはめたのがこの記事です。
前提:目標大会までの週数と、週の練習回数で中身が変わる
計画を組むとき、最初に決めるのは次の4つです。
- 目標大会と出る種目の日:「12週間前」の起点は、大会初日ではなく自分の種目が行われる日です。短水路(25m)か長水路(50m)かも要項で確認します
- 目標タイム:現状のタイムを測ってから決めます(次の章)
- 週に何回泳げるか:週1回の人は「測る日」と「泳ぐ日」を同じ日にまとめます。週3回の人は日によって役割を分けられます
- 1回の練習時間:この記事は60分前後・2,000〜2,300mで組んでいます。45分の人は Kick か Pull を1セット減らしてください
12週間は次の4つの期に分けます。距離の目安は普段の練習量を100%としたときの比率です。
| 期 | 残り週数 | テーマ | 距離の目安 | 詳しい記事 |
|---|---|---|---|---|
| 準備期 | 12〜9週 | 現状を測り、目標とペースを決め、泳げる量を普段に戻す | 90〜100% | この記事 |
| 土台期 | 8〜6週 | 同じ速さで少し長く泳げる量を広げる | 110〜120% | 8週間メニュー(前半) |
| ペース期 | 5〜3週 | 目標ペースで泳ぐ本数をそろえる | 100% | 8週間メニュー(後半) |
| 調整期 | 2〜1週 | 量を減らし、速さと感覚を残す | 70〜50% | 2週間前からの調整メニュー |
なお、マスターズの短水路大会は1月下旬〜3月に全国各地で開かれ、日本マスターズ水泳協会の競技会案内(2026年11月7日時点)では、1月23〜24日の新春マスターズスイムミート千葉会場の申込が11月12日〜25日、1月30〜31日の大阪会場が11月19日〜12月2日、3月6〜7日のJSCA全国マスターズスイミングフェスティバル(松山)が12月1日〜1月22日となっています。1月30日の大会なら、12週間前はちょうど今週(11月7日)です。開催日・締切・使用プール・登録の要否は各大会の開催要項で必ず確認してください。
目標タイムの決め方:まず測り、次に「12週間で届く幅」に置く
目標タイムは「願望」ではなく、直近の実測から決めます。手順は3つです。
- 12週間前の週に、出る種目を1本全力で泳いで測る(メニューA)。自己ベストが1年以上前なら、その記録ではなく今の計測値を起点にします
- 起点から、12週間で狙う幅を置く。私がマスターズの方に目安として伝えているのは、100mなら計測値の1〜2秒、50mなら0.5〜1秒、200mなら3〜5秒の範囲です。週1回の人は幅の小さい側、週3回の人は大きい側で考えます。伸び幅は個人差が大きいので、あくまで「計画を組むための仮の数字」として置き、9週間前の再計測(後述)で見直します
- 目標タイムを50m・100mのペースに割る(次の表)。練習のMainセットは、このペースを基準に組みます
目標タイム → 練習ペース換算表(100m自由形の例)
短水路100mを例に、目標タイムから各期のMainで使うペースを割り出した表です。「レースペース」は目標タイムを2で割った50mの速さ、「持久ペース」は100mあたり目標+12〜15秒、「土台ペース」は100mあたり目標+18〜22秒を目安にしています。自分の目標に近い行を選び、端数は切り上げてください。
| 目標100m | 前半50m/後半50m | レースペース(50m) | 持久ペース(100m) | 土台ペース(100m) |
|---|---|---|---|---|
| 1’00 | 28.5/31.5 | 30.0 | 1’12〜1’15 | 1’18〜1’22 |
| 1’10 | 33.5/36.5 | 35.0 | 1’22〜1’25 | 1’28〜1’32 |
| 1’20 | 38.5/41.5 | 40.0 | 1’32〜1’35 | 1’38〜1’42 |
| 1’30 | 43.5/46.5 | 45.0 | 1’42〜1’45 | 1’48〜1’52 |
| 1’45 | 51.0/54.0 | 52.5 | 1’57〜2’00 | 2’03〜2’07 |
| 2’00 | 58.5/1’01.5 | 1’00 | 2’12〜2’15 | 2’18〜2’22 |
前半・後半の差を3秒前後にしているのは、マスターズの100mでは「前半で貯金を作りすぎて後半に失速する」ケースがとても多いためです。50mが種目なら、目標を前半25m+1秒=後半25mの感覚で割ります。200mなら、100mごとの差を2〜3秒に置いて、持久ペースを「目標200mを2で割った100m+5秒」に読み替えてください。
サークルの目安:自分の実力帯に合わせて読み替える
以下のメニューのサークル(出発間隔)は、実力帯で3段階に分けて表記しています。普段の練習で100mを泳いだときのおおよそのタイムで、自分の列を選んでください。
| 実力帯 | 100mの普段のタイム | 50mのサークル | 100mのサークル | 200mのサークル |
|---|---|---|---|---|
| A | 1分20秒前後まで | 1’00 | 1’50 | 3’40 |
| B | 1分20秒〜1分40秒 | 1’15 | 2’15 | 4’30 |
| C | 1分40秒〜2分10秒 | 1’30 | 2’45 | 5’30 |
メニューでは「100m × 4|1’50 / 2’15 / 2’45」のように A / B / C の順に3つ書いています。準備期のサークルは泳ぎ終えて20〜30秒休める程度が目安です。この時期は量も速さも追いかけないので、休みが足りなくてフォームが崩れるくらいなら一段ゆるい列に移してください。
準備期(残り12〜9週)の練習メニュー:測って、決めて、普段に戻す
この4週間のテーマは「土台づくりに入る前に、起点とペースをはっきりさせる」です。夏の大会から間が空いて練習量が落ちている人は、ここで普段の量に戻しておきます。メニューは3種類です。
メニューA:現状を測る日(約2,000m・約60分)
| 区分 | 内容 | サークル(A / B / C) | ねらい |
|---|---|---|---|
| W-up | クロール 200m ゆっくり → Kick 100m → Drill 100m | — | 体を起こす |
| Kick | 50m × 6 板あり・一定の強さ | 1’15 / 1’30 / 1’45 | 脚を温める |
| Pull | 100m × 4 ブイあり・呼吸は3回に1回 | 1’50 / 2’15 / 2’45 | 上半身を温める |
| Drill | 50m × 4 25m ドリル/25m スイム | 1’15 / 1’30 / 1’45 | フォーム確認 |
| Main | 出る種目の距離を 1本全力(例:100m × 1)→ 5分休む → 50m × 4 目標レースペースで | 50mは 1’30 / 1’45 / 2’00 | 起点の計測と、ペースの感覚づくり |
| Main2 | 25m × 4 スタート・ターン練習 | 1’00 | 短水路のターン数に慣れる |
| Down | 300m イージー | — |
合計 約2,000m/約60分。計測はW-upのあと、疲れる前に行います。計測したタイムはプールサイドで必ずメモし、「目標タイム→練習ペース換算表」の行を決めてください。
メニューB:泳げる量を普段に戻す日(約2,300m・約60分)
| 区分 | 内容 | サークル(A / B / C) | ねらい |
|---|---|---|---|
| W-up | クロール 400m(100mごとに Swim/Kick/Pull/Swim) | — | 体を起こす |
| Kick | 50m × 8 板あり・4本目と8本目は少し速く | 1’15 / 1’30 / 1’45 | 脚の持久 |
| Pull | 100m × 3 ブイあり・一定 | 1’50 / 2’15 / 2’45 | 上半身の持久 |
| Main | 200m × 4 「土台ペース」の100mを2つ並べた速さで、4本すべて同じタイム | 3’40 / 4’30 / 5’30 | 同じ速さで泳ぎ続ける感覚 |
| Easy | 100m × 1 ゆっくり | — | 息を整える |
| Down | 300m イージー | — |
合計 約2,300m/約60分。Mainの200mは「4本目がいちばん遅い」なら設定が速すぎます。次回は土台ペースの遅い側で泳いでください。
メニューC:フォームと技術の日(約2,000m・約60分)
| 区分 | 内容 | サークル(A / B / C) | ねらい |
|---|---|---|---|
| W-up | クロール 400m ゆっくり(最後の100mは背泳ぎでもよい) | — | 体を起こす |
| Drill | 50m × 8 25m ドリル/25m スイム(キャッチアップ・片手・6ビートなど2種類を4本ずつ) | 1’15 / 1’30 / 1’45 | ストロークの確認 |
| Kick | 50m × 6 板なし・ストリームライン | 1’15 / 1’30 / 1’45 | 姿勢 |
| Pull | 50m × 6 ブイあり・ストローク数を数える | 1’15 / 1’30 / 1’45 | 1かきの距離 |
| Main | 100m × 4 「持久ペース」で、ストローク数をPullと同じに保つ | 1’50 / 2’15 / 2’45 | 速さを上げてもフォームを崩さない |
| Down | 200m イージー | — |
合計 約2,000m/約60分。準備期にフォームの日を入れるのは、土台期に距離が増えたとき、崩れたフォームのまま量を積まないためです。
週1〜3回別・準備期4週間の組み立て表
| 残り週数 | 週1回 | 週2回 | 週3回 |
|---|---|---|---|
| 12週 | A(計測) | A(計測)・B | A(計測)・B・C |
| 11週 | B | B・C | B・C・B |
| 10週 | C | B・C | B・C・B |
| 9週 | A(再計測) | A(再計測)・B | A(再計測)・B・C |
9週間前に必ずもう一度計測します。12週間前の計測は夏以降の練習量が落ちた状態で出たタイムであることが多く、4週間普段の量に戻しただけで1〜2秒変わる人が珍しくありません。再計測の結果で目標タイムと練習ペースの行を決め直し、8週間前から土台づくりのメニューに入ります。週1回の人は、12週前と9週前の2回しか「A」が入りませんが、計測を飛ばさないでください。計測がないと、その後8週間の練習ペースが決まりません。
12週間ロードマップ:週ごとに「何を見るか」
| 残り週数 | 期 | この週に見るもの | メニューの出どころ |
|---|---|---|---|
| 12 | 準備 | 計測タイム・仮の目標タイム | この記事 A |
| 11〜10 | 準備 | 200m × 4 が同じタイムでそろうか | この記事 B・C |
| 9 | 準備 | 再計測・目標タイムの確定 | この記事 A |
| 8〜6 | 土台 | 普段の110〜120%の距離を泳ぎ切れるか | 8週間メニュー A・B |
| 5〜3 | ペース | レースペースの50mを本数そろえて回れるか | 8週間メニュー C・D |
| 2〜1 | 調整 | 距離を減らしても速さが残っているか | 2週間前からの調整メニュー |
| 前日 | — | 体を動かす程度 | 大会前日のメニュー |
よくある失敗
1. 目標タイムを「願望」で決める
数年前の自己ベストや「キリのいい数字」を目標に置くと、練習ペースが今の自分より速すぎる設定になり、Mainの本数がそろいません。目標は必ず直近の計測から置き、9週間前に見直してください。
2. 12週間ずっと同じメニューを繰り返す
「練習メニュー表」を1枚用意して12週間回すと、最初の3〜4週で伸びが止まります。準備・土台・ペース・調整の4つに分けて、期ごとにMainの中身を変えるのがこの記事の骨格です。
3. 計測をしないまま練習を始める
「大会で測ればいい」と思って計測を飛ばすと、12週間のMainが全部「なんとなくの速さ」になります。計測は1本だけ、W-upの直後です。
4. 週に泳げる回数より多い計画を立てる
週3回の表を見て「がんばれば週3回いける」と組み、実際は週1〜2回になるケースです。計画は確実に泳げる回数で組み、泳げる週が増えたらBを足してください。逆は成り立ちません。
5. 「12週間前」の起点を間違える
大会初日ではなく、自分の種目の日から数えます。2日間の大会で2日目に出るなら、起点は1日ずれます。短水路の大会に長水路で計測した起点を使うのも、ターン数が違うためずれの原因になります。
よくある質問
Q. 自己ベストが何年も前で、目標タイムをどこに置けばいいか分かりません。
自己ベストはいったん忘れて、12週間前の計測値を起点にしてください。そこから「12週間で届く幅」(100mなら1〜2秒)を置いたものが仮の目標です。自己ベストに近づくかどうかは、9週間前の再計測で判断します。大会で自己ベストを狙うのは、その次の大会からでも遅くありません。
Q. 週1回しか泳げません。12週間前から計画する意味はありますか?
あります。週1回の人ほど、1回の練習の中身を「今日は測る日」「今日は量を戻す日」とはっきり決める必要があり、そのために12週間の設計図が要ります。準備期の表では週1回でも計測を2回入れています。土台期以降は8週間メニューの週1回の列に進んでください。
Q. 大会まで10週間しかありません。この記事をどう使えばいいですか?
準備期を4週間から2週間に縮めます。残り10週でA(計測)、残り9週でBまたはC、残り8週から土台期に入り、再計測は土台期の最初の週のW-up後に差し込んでください。8週間を切っている場合は、この記事のAだけ1回やって、そのまま8週間メニューの該当する週から始めます。
まとめ:12週間前にやるのは「泳ぎ込み」ではなく「設計」
大会12週間前の4週間は、測って、目標を決めて、ペースに換算して、12週間を4つに分けるための期間です。ここが決まると、8週間前からの土台づくりも、最後の調整も、全部「目標タイムから割り出した速さ」で組めるようになります。メニューの作り方の基本は水泳の練習メニューを自分で作ってみようにもまとめていますので、あわせて読んでみてください。
swim coach のご案内
あなたの目標大会まで、あと何週間ですか?
ここまで紹介してきた練習は、多くのスイマーに効果があるものです。ただ、それを「いつ・どれだけやるか」は、目標大会までの残り週数と、週に何回泳げるかで変わります。
swim coach は、目標大会・目標タイム・週の練習回数・1回の練習時間を入力すると、初週の練習メニューと、大会までのロードマップを作成します。W-up・Kick・Pull・Main・Down まで、サークル付きで1日1枚。プールサイドでそのまま使えます。
入力は約3分。カード登録は不要で、初週のメニューは無料で作れます。
※18歳以上の成人マスターズ向け/週1〜7回・1回30分〜3時間・25m/50mプール対応


