1〜3月の短水路大会に向けて、11〜12月のオフ期に泳ぐ「土台づくり」の水泳練習メニューを、マスターズ向けに週1〜3回別・距離と本数とサークル付きで紹介します。大会8週間前から始める逆算プランです。
「冬の大会にエントリーした。本番は1月末。それまでの2か月、何をどれだけ泳いでおけばいいのかが分からない」
次の目標を冬の短水路大会に置いたマスターズスイマーから、この時期にいちばん多く受ける相談です。選手時代は「11月は量を積む時期」とコーチが決めてくれましたが、自分で練習を組んでいる大人のスイマーには、その切り替えの合図がありません。普段と同じメニューを続けて大会2週間前を迎え、調整(テーパリング)だけを頑張る形になりがちです。
この記事では、目標大会の8週間前から2週間前まで(6週間=調整に入る直前まで)の練習メニューを、週1回・週2回・週3回それぞれの場合に分けて、距離・本数・サークル付きで紹介します。いわゆる「オフ期の土台づくり」を、普段の練習量が少ないマスターズ向けに組み直したものです。
対象は18歳以上の成人マスターズで、25mまたは50mのプールで週1〜3回・1回60分前後泳いでいる方です。普段のメニューは1時間でできる社会人・マスターズの練習メニュー表を前提にしていますが、距離の目安を自分の普段に置き換えれば使えます。
この記事が答える問い:大会8週間前の今、「何を積んで、何を後回しにするか」
土台づくりの原則はひとつだけです。先に「泳げる量」を作り、速さはあとから乗せる。
多くの人が間違えるのが、エントリー直後からレースペースの短い練習ばかりを繰り返すことです。8週間前にそれをやると2〜3週間で伸びが止まり、残りを「同じ速さで同じ疲れ方をする」ことに使ってしまいます。先に泳げる量を広げておくと、ペース練習に入ったときに本数をそろえられ、最後の2週間の調整で落とす余白も生まれます。
マスターズ固有の注意点として、土台づくりは「きつい練習を増やす」ことではありません。この記事の「量を増やす」は、1回あたり+200〜400m、本数で言えば1〜2本分です。
前提:目標大会までの週数と、週の練習回数で中身が変わる
メニューを組むとき、最初に決めるのは次の3つです。
- 目標大会までの残り週数:8週間前にスタートし、「土台(前半3週)」「ペース導入(後半3週)」「調整(残り2週・別記事)」に分けます
- 週に何回泳げるか:週1回の人は「積む」余地がないので、1回の中身を入れ替えます。週3回の人は日によって役割を分けられます
- 出る種目の距離:50m・100m中心か、200m以上かで、後半3週のMainが変わります(FAQで触れます)
目安として、前半3週は普段の110〜120%、後半3週は普段と同じ100%の距離で組みます。前半で距離を少し広げ、後半は距離を戻してその分をペース練習に使う配分です。週1回の人は中身を入れ替える形で対応します(後述)。
なお、マスターズの短水路大会は全国各地で1月下旬〜3月に開かれ、エントリー期間は多くが11月〜1月です。日本マスターズ水泳協会の競技会案内(2026年10月末時点)では、1月下旬の新春マスターズスイムミート(千葉・大阪会場)の申込が11月中〜12月上旬、3月上旬のJSCA全国マスターズスイミングフェスティバルの申込が12月上旬〜1月下旬です。開催日・締切・使用プール(25m/50m)・登録の要否は各大会の開催要項で必ず確認してください。「8週間前」の起点は、自分が出る種目の日です。
サークルの目安:自分の実力帯に合わせて読み替える
メニューに書くサークル(出発間隔)は、実力帯で3段階に分けて表記しています。普段の練習で100mを泳いだときのおおよそのタイムで、自分の列を選んでください。
| 実力帯 | 100mの普段のタイム | 50mのサークル | 100mのサークル | 200mのサークル |
|---|---|---|---|---|
| A | 1分20秒前後まで | 1’00 | 1’50 | 3’40 |
| B | 1分20秒〜1分40秒 | 1’15 | 2’15 | 4’30 |
| C | 1分40秒〜2分10秒 | 1’30 | 2’45 | 5’30 |
以下のメニューでは「100m × 6|1’50 / 2’15 / 2’45」のように、A / B / C の順に3つ書いています。土台づくりの時期のサークルは泳ぎ終えて15〜25秒休める程度が目安です。ぎりぎりで回ると速さの練習になり量が積めません。休みが40秒を超えるなら一段速い列に移してください。
前半3週(残り8〜6週)の練習メニュー:泳げる量を広げる
この3週間のテーマは「同じ速さで、少し長く泳げるようにする」です。Mainは100m・200mを中心に、タイムをそろえることだけを狙います。速くする必要はありません。
メニューA:有酸素の日(約2,400m・約60分)
Mainの100m × 8は「8本とも同じタイムで泳げる速さ」から始めます。普段より1本あたり3〜5秒遅くてかまいません。3週目に8本が楽にそろったら、本数を10本にするか、サークルを一段速い列に移します。両方同時には変えません。
メニューB:キックと技術の日(約2,200m・約60分)
この週に週3回泳げる人は、A → B → Aの順で入れます。週2回ならA → B。週1回の人はAだけを行い、Kickを「50m × 6」から「100m × 4(2’30 / 3’00 / 3’30)」に差し替えてキックの量を確保してください。
後半3週(残り5〜3週)の練習メニュー:ペースを乗せる
この3週間のテーマは「積んだ量の上に、レースの速さを乗せる」です。距離は普段と同じ100%に戻し、週に1回は出る種目の目標タイムから割り出したペースで泳ぐ日を作ります。Mainのサークルは前半より長くとり、1本1本の速さを優先します。
メニューC:ペースの日(約2,000m・約60分)
Mainの100m × 5は、100mの目標が1分30秒なら1本1分30〜33秒をそろえることが狙いです。1本だけ速いより、5本が同じほうを評価してください。3週目に5本がそろうなら6本に増やします。
メニューD:有酸素を保つ日(約2,100m・約60分)
週3回の人はC → D → C(3週目は C → D → B で技術を戻す)。週2回の人はC → D。週1回の人はCだけを行い、Main2の50m × 6を4本に減らして、代わりにDownを400mにしてください。
残り2週間に入ったら、大会2週間前からの練習メニュー(テーパリング)に切り替え、量を落として速さを残す段階に進んでください。前日は大会前日のメニューサンプルをそのまま使えます。
週1〜3回別・8週間の組み立て表
ここまでのメニューを、週の練習回数ごとに8週間に並べたものです。曜日は自分の予定に合わせてずらしてかまいませんが、「ペースの日(C)」と「ペースの日」の間は2日以上あけるようにしてください。
| 週の回数 | 前半3週(残り8〜6週) | 後半3週(残り5〜3週) | 残り2週〜前日 |
|---|---|---|---|
| 週1回 | A(Kickを100m × 4に差し替え) | C(Main2は4本・Down 400m) | 2週間前からの調整メニュー → 前日メニュー |
| 週2回 | A → B | C → D | |
| 週3回 | A → B → A | C → D → C(3週目は C → D → B) |
前半3週の週あたりの距離は、週1回で約2,500m、週2回で約4,600m、週3回で約7,000mです。普段の60分メニュー(1回約2,000〜2,300m)の110〜120%に収まるはずです。後半3週は週3回で約6,100mと、普段とほぼ同じ量に戻ります。
「なぜこの順番か」を深く知りたい方は、持久力強化の練習メニュー作り3つのポイントと、年間の期間分けをまとめたベストタイムを出すための練習メニューの作り方をどうぞ。この8週間は、その考え方をマスターズの練習回数に合わせて短くしたものです。
よくある失敗
1. 8週間前からレースペースばかり泳ぐ
いちばん多い失敗です。量の土台がないまま速さだけを積むと、3週目あたりで同じタイムが出なくなり、大会までを停滞したまま過ごすことになります。前半3週は「遅くてもそろえる」に徹してください。
2. 「土台づくり=きつくする」と思って距離を倍にする
週2回・1回2,000mの人が1回4,000mにすると、翌日の生活がもたず、結果として週1回に減ってしまいます。増やし幅は1回あたり+200〜400mまで。それ以上は週の回数を増やせるようになってからで十分です。
3. サークルを詰めすぎて、量の練習が速さの練習になる
「ぎりぎり回れる」サークルにすると、後半でフォームが崩れ、量を積むつもりが疲れを積むだけになります。前半3週は休みが15〜25秒とれるサークルを選び、速さは後半3週に回してください。
4. 泳げなかった週を「取り戻そう」として翌週に詰め込む
仕事や予定で1週抜けることは、大人のスイマーには普通に起きます。抜けた分は取り戻さず、その週の予定どおりのメニューから再開してください。8週間のうち1週抜けても、残りの7週で土台は十分に作れます。
5. 「8週間前」の起点を間違える
エントリー締切から数える、2日間の大会で1日目から数える、というケースが意外に多いです。自分が出る種目の日から逆算してください。エントリー時点で8週間を切っているなら、前半を2週に短縮し、後半3週と調整2週を優先します。
よくある質問
Q. 週1回しか泳げません。それでも8週間前から土台づくりをする意味はありますか?
あります。ただし「積む」ではなく「順番を守る」土台づくりになります。8週間で泳げるのは8回だけなので、前半3回はメニューA、後半3回はメニューC、最後の2回は調整メニューという順番そのものが計画です。量を増やす余地がないぶん、Kickの量を確保して、Downを長めにとることを優先してください。
Q. 大会までもう6週間しかありません。この記事をどう使えばいいですか?
前半3週を2週に、後半3週を2週に短縮し、調整の2週間はそのまま残してください。削るなら前半です。土台づくりは「あるほうがよい」段階で、ペース練習と調整は「ないと本番に響く」段階だからです。4週間を切っている場合はメニューCを1〜2回入れてから調整に移ってください。
Q. 50mと200mの両方に出ます。後半3週のMainはどちらに合わせればいいですか?
基本はこの記事のまま、メニューCのMainとMain2で役割を分けます。Main(100m × 5)は200mの目標ペースでそろえ、Main2(50m × 6)は50mの目標ペースで泳ぎます。50mだけに出る人はMainを「50m × 8(1’30 / 1’45 / 2’00)」に、200m以上だけなら Main2を「100m × 3 目標の200mペース(2’30 / 3’00 / 3’30)」に差し替えてください。
まとめ:土台づくりは「速くする練習」ではなく「速さを乗せる場所を作る練習」
大会8週間前からやることは、先に泳げる量を広げ、そのあとでレースの速さを乗せることです。前半3週は普段の110〜120%でタイムをそろえ、後半3週は普段の量に戻して目標ペースを入れ、残り2週間は調整メニューに切り替える。一度やってみると、次の大会からは自分なりに前半と後半の長さを調整できるようになります。
このメニューは、週1〜3回・1回60分前後という条件で組んだ出発点です。大会まで3か月以上ある方や週4回以上泳げる方は、ベストタイムを出すための練習メニューの作り方で期間全体の配分から考えてみてください。
swim coach のご案内
8週間の流れは分かった。では、自分の大会日と週の回数に合わせると、今週は何をどれだけ泳げばいい?
ここまで紹介してきた練習は、多くのスイマーに効果があるものです。ただ、それを「いつ・どれだけやるか」は、目標大会までの残り週数と、週に何回泳げるかで変わります。
swim coach は、目標大会・目標タイム・週の練習回数・1回の練習時間を入力すると、初週の練習メニューと、大会までのロードマップを作成します。W-up・Kick・Pull・Main・Down まで、サークル付きで1日1枚。プールサイドでそのまま使えます。
入力は約3分。カード登録は不要で、初週のメニューは無料で作れます。
※18歳以上の成人マスターズ向け/週1〜7回・1回30分〜3時間・25m/50mプール対応


